みなさん、本当にお久しぶりでございます。ハロウィンを前に、今年は山手線にならず者の西洋人たちが何人ぐらい乱入するのかを心配する今日この頃ですが、お元気でしたか?
真っ先にアナウンスしたいことがあります。今週末、「ラジオの街で逢いましょう」への出演継続を辞退しました。同番組がオリンパス社の一社提供であり、オリンパス疑惑を追及し続ける上で利害が衝突すると考えた末の決断です。以下、背景を解説します。
1000億円規模に達しようとする不透明な企業買収が絡むオリンパス問題が発生しており、以下のサイトで報道の簡単な時系列を確認できます。
オリンパス社スキャンダル報道時系列まとめ
via @getnewsfeed
ただし、日本のマスコミと海外メディアとの間には大きな隔たりがあります。日経新聞を筆頭に国内大手マスコミの報道量は微少であり、日本の企業に関する問題であるにも関わらずFACTAやJBpressのようなマイナー・独立系メディアしか活発に動いていません。しかし欧米では大問題として強く注目されています。たとえばGoogleで「Olympus CEO」というキーワードで過去1週間分のニュース検索をすると、日本語記事よりも英文の記事の方が圧倒的に多いことがわかるでしょう:
「Olympus CEO」でGoogleニュース検索(過去1週間)
「オリンパス」でGoogleニュース検索(過去1週間)
イギリスではSFO(重大不正捜査局)、アメリカではFBI(連邦捜査局)とSEC(証券取引委員会)が捜査を始めており、オリンパス社のイギリス法人やアメリカで関わった幽霊のような会社に対してメスが入るだろうと予想されています。一方日本では当事者のオリンパスはもちろん、証券取引等監視委員会が「買収のいきさつや金の流れなどに問題がないか
検討を始め」た程度で、ぐずついています。当事者は情報を公開せず、株価は暴落を続け、当局による消極的な姿勢が海外から批判されているにも関わらず、全体にスピードアップしていません。これは「日本株式会社」への評価が下がる呼び水にもなります。
さらに、欧米メディアの報道には頻繁に「反社会勢力」「やくざ」というキーワードが登場していますが、日本のメディアは何かを知っていて逃げているかのように、暴力団の関与について報じていません。もちろん何も断定的な情報は出ていませんが、黒い霧が漂っている状態です。
「Olympus yakuza」でGoogle ニュース検索をした結果
「オリンパス 反社会勢力」でGoogleニュース検索をした結果
もう「映画化決定」の領域なのに、なぜ日経新聞を筆頭に大手メディアはちょっとしか報じないのか?その理由の一つに、オリンパス社には日経からの社外取締役が天下っている、と指摘する声があります。
ゆかしメディア 日経報道緩い? オリンパス、元日経専務が役員に
JBpress あのオリンパスに「日経ビジネス」元関係者が社外取締役
インサイダー同士が仲良しクラブを作り、株主もオリンパス社員も締め出された密室で好き放題が行われている、というイメージがここから示唆されます。ひたすら口を閉ざすオリンパス経営陣と消極的な国内メディアの報道は、このようなシグナルを海外に向かって増幅しています。なのに、日本側ではすでに「幕引き」ムードが漂い始めている状態です。
実際に何が起きたのか、法的な問題の有無、反社会的な勢力が関与しているのか、株価は持ち返すのか?そしてこれは日本の企業風土に深く浸透している現象の片鱗なのか?などなど、疑問は尽きませんが、判断材料となるデータさえ公開されれば専門家たちによって徹底的な解析がなされるでしょう。その段階になったら、経済学をまったくと言っていいほど理解していないぼくがしゃしゃり出る幕ではない、ということを、襟を正して強調いたします。ほんと、TPP問題を説明されてもわからないぼくがこの問題を追いかけていること自体が、おかしい。
ダイヤモンド・オンライン 今度は確かに「日本メディアは書かなかった」
オリンパス問題でそらみたことかと
この記事から抜粋します:
「日本は外国と違うんです。日本には日本にやり方があるんです」と言いつつ、「日本は国際社会の有力な一員」でもありたい。それは日本人の多くが(幕末のころから?)抱えている自己矛盾だと思います。けれども「日本特殊論」を日本人が、日本の会社が、日本のマスコミが、言い訳として使うのは、非常に悪い癖です。自分たちに対するステレオティピカルなイメージを自分たちで補強してそこに寄りかかっている。それは甘えであり、結局は「日本はよくわからない国。つきあいにくい国。ビジネスしにくい国」というマイナスイメージにつながるのに。
現在進行しているのは日本語の壁のこちら側とあちら側(つまり世界全体)の情報格差です。奇天烈(きてれつ)なことですが、オリンパス社の疑惑に関して日本語の情報が不足し、それを英語を通じてブーメランのように読み取ることしかできません。何かが変です。この報道の破綻、日本株式会社を支えてきた「日本特殊論」の破綻に注目しております。そしてツィートで欧米の速報ヘッドラインを流すことにミッションを感じています。
このような発信をしているため、オリンパス提供の「ラジオの街で逢いましょう」に出演し続け、妙な緊張感の中でコメントするのは不透明さを増すだろうと判断し、自分から降板を申し出ました。レギュラーを去り、仕事を削るのは残念なことですが、引き続き出演されている皆さんにクオリティーを維持していただければ本望です。この先は「ニコ生」など、他のプラットフォームでさまざまなイシューを議論していこうと思います。
また、以下の講演会にも出演予定です。
11月13日 名古屋
「大川興業・大川総裁のお笑い安全保安委員会」
出演/大川豊(大川興業総裁)
ゲスト/モーリーロバートソン(ジャーナリスト・i-morley主
宰)
11月19日 東京 日本歯科大
『 3.11の真実、そしてその後の報道の真実 』
講師 上杉隆 氏 / モーリー・ロバートソン
最後に近況を報告しますと、現在「i-morley」は休止中で、作曲と執筆に集中しています。年内にアルバムを完成、来年の春までに書籍の完成を目指しています。オリンパス問題とそれに次ぐ「Occupy Wall Street」運動では緊急性を感じて例外的にツィートを再開していますが、ツィッターを公の議論の場として捉えておりません。コメントやリプライには反応せず、情報へのリンクのみを流す方針です。それぞれの事態が沈静化した場合、ツィートをやめて創作に戻ります。アルバムと書籍が完成するまでは「i-morley」を再開する予定はありません。その一方で「ニコ生」や講演会は引き続きオファーに応えていきます。
それでは皆さん、かぼちゃとさつまいもの季節になりましたが、お体をお大事にどうぞ!