☆先ほど「オフィス・モーリー」に戻りました。目まぐるしい展開の中、張り詰め続けたツアーだったので、今は困憊・消耗しています。でも達成感もぞんぶんにあります。
いやー、本当に楽しい時間を皆さまといっしょに過ごせて感謝してます!それぞれのスペースでそれぞれのシチュエーションがありました。来た人はそれぞれの思い出を持ち帰ったことでしょう。
まず、大阪の「電気蕎麦」。ここはものすごい発信地です。ヤングなオーディエンスが出入りし、盛り上げている独特のバイブレーションで、天満橋の街の中に異空間が出現しています。インテリアの金属や照明、バーカウンターでお蕎麦を注文できる老舗スタイル、夜が更けるにつれて徐々に「何でもあり」の気配が高まっていく感じ...すべてが「あるべき大阪」つまり「アナーキー」でした。そこでやった初演も、その後のジャムセッション、みんなで騒いでいるうちに警察がやってきて「大変だ」みたいになった流れ。もう、最高です。毎週末でも、これで行きたい!
この機会に告白すると、実はぼく、1996年にリリースしたCDのツアーで大阪の難波「ベアーズ」というライブハウスに出たことがあります。その時のツアーはアメリカからミュージシャン2名を呼び寄せ、韓国や中国もアポ無しで強引に回って実演するという「力業=ちからわざ」の公演旅行でした。実際、途中で急にアジアへと進出することを決めてしまい、当初の予算を大幅に上回った分を100万だか200万だか私費で放り込んだほどです。
で、ソウルでは日本語で一曲を歌ったために警察がやってきて逃げる騒ぎが起こり、深夜ラジオ番組で公開謝罪を強要されるわ、アンプの無い居酒屋でギターだけをステレオのラインにつないで、ベースはアンプ無し、ドラムはバケツで叩くというめちゃくちゃなライブをやるわ、北京ではフィリピン人バンドの休み時間にステージに上がらせてもらうわ、天安門広場でドラマーのタトゥーが面白くて人だかりが出来るわで、大変に上がった状態で関空に帰国したその日のこと。「ベアーズ」に楽器を持って乗り込んで、さて本番というときに、お客が関係者も含めて8人。会場はがらん、としてしまいました。
「うそだろー!この破竹の勢いがついている時に!」
と声に出してファッキンシットでしたが、お客さんが増えてくれません。壁によりかかった人影にぼんやりと眺められながら、レパートリーをものすごい速さで駆け抜けて天井に向かって歌った一幕でした。確かレコード会社の人間も告知ひとつ出さず、「ベアーズ」のカレンダーに「モーリー・ロバートソン」とだけ載っていた感じで、まったくの鳴かず飛ばずです。ほんとうに悔しかった。
そしてそれから数えて6年後の2002年。荒削りなサウンドをテーマに結成したトリオのバンドで「いぬん堂」のツアーにブッキングされ、今度はリベンジを果たそうと燃えていました。ところがバンド自体が財政難に陥り、「もう持ち出しのツアーはできない。ギャラと経費が出るライブしかやりたくない。バイトがある」みたいな反対意見を押し切ることができず、日程の直前に事実上の内部崩壊が起こりました。でも「ベアーズ」へのリベンジを果たしたいぼくは、行かないことになったメンバーの「iBook」を借りて、急遽コンピューター・ミュージックのプログラムを組んで持って行ったのです。
だがしかし...サウンドチェックで「iBook」をつないで起動させた途端、マウスも動かなくなるほどに凍結しました。ぼくも凍りました。強制再起動を何度かけても、何も起こりません。
「すみません、次の方がおられるのでサウンドチェック終わりでーす」
みたいなことをPA越しに言われたとき、1996年の屈辱が倍になって再来しました。あまりに、悔しい。そこに来ていたもう一つのバンドのメンバーに頼み込んで「全部即興+知っている曲をめちゃくちゃなメドレーにして、バックで演奏して!歌うから!」
と懇願。ジョイント・セッションに対してまったく心の準備がないタイプのメンバーさんだったこともあり、まあ何とかやったけど、舞台上ですでに空中分解し、言うなれば自分に火を付けてその燃えっぷりをご鑑賞いただくはめに。ファッキン・ジーザス!それが2002年。
そして2010年、「電気蕎麦」。すっごく透明なひとときだった。何をやっているか自分で聞こえたし、流れもつかめたし、それが見えない対流になってお客さんとエネルギーの対流も起こっているのがわかった。ばっちりじゃん。おまけに終わった後、興奮したお客さん同士がとっくみあいのけんかを始めちゃって、あげくにはうるさいから警察の参上だよ?もうこれ以上ほしいものはない、と思ったね!あれでジンクスが取れた。
もう難波「ベアーズ」も怖くはない。待ってろ「ベアーズ」。近い将来またバンドを引き連れていくからな!
そして2日目の京都「アバンギルド」では、池田さんの飛び入りでトーク・ショーを行い、大トリでVJとのコラボ演奏を行いました。その模様は途中でソフトが落ちたため、USTREAMからは抜け落ちましたが、デジカメの動画モードで一部撮影されたものが残っております。すっごく色彩がきれいで、音楽とVJが見事にマッチしています。今度、お見せします。音も後で聞き返すと、メインのスピーカーから出ている音響は「バッチグー」でした。
最終日は神戸の「farmhouse cafe」。まごころ、手作り、みんなが集まれる家というモチーフが満載の会場が満員になり、ぎゅっと詰まった空間で30分の実演と2時間のトークを繰り広げてクライマックスとなりました。終わった後は、声が出ませんでした。燃え尽きる過程で、来場した皆さんに何かをお渡しできたという手応えもありました。
そしてこの関西の3カ所でそれぞれに味わい深い料理をいただきました。電気の通ったエレクトリック・蕎麦、京野菜の精進料理コース、中華街の手作り飲茶セット、そして「観音屋」のシュールレアリストが考えたようなチーズケーキ。そして-- you guessed it -- どこもかしこも小休止はドトールですよ。ポイントカードを出し続け、将来の1杯の無料コーヒーに向けて貯め続けました。
戻りの「のぞみ」にもすんなり乗れ、九州南部から四国にかけて広がっている豪雨を出し抜いて東海地方へと抜けることに成功。東京に着いた頃、部分月食が起きていました。見なかったけど。
3カ所の公演を可能にしてくださった関係者の皆さま、ラップトップ奏者の坂谷さん、入念なサウンドのサポートをしてくださったPAの浅岡さん、そして舞台監督の西川さん、「farmhouse cafe」のきょうこさんとまさきさん、楽しかったです!いただいたこの流れを大切にします。
そして来週末から再び、北陸→山陰→山陽→九州へと旅立ちます。道中で出会うかも知れないみんな、なにとぞよろしく!