「モーリー大学」に関するアップデート

アメリカのアニメ「サウスパーク」をめぐる検閲の問題がアメリカで現在、拡大中です。イスラムの預言者ムハンマドを描いてもいいかどうか、という議論や宗教上のタブーを風刺した回の放映を受けて、ニューヨークに拠点を置くイスラム原理主義団体が「死の警告」を発したところ、放送局が萎縮し、同番組が検閲・黒塗りをされた形で放映されました。

この自主検閲に対してアメリカ社会で議論が巻き起こり、意識調査に対して70パーセントを超えるアメリカ人はが「イスラムの預言者が主題であっても検閲してはならない」と表現の自由を優先する答えを選んでいます。また、あるイラストレーターが「5月20日はみんなで預言者ムハンマドの肖像画を描こう」と呼びかけたところ、ソーシャル・ネットワーク・サイトのFacebookを中心に賛否両論がまたたく間に起こり、支持する人と反対する人の書き込みが日を追って激しくぶつかっています。

さらにこの騒ぎにアメリカの右派ブロガーが便乗し、反イスラムのメッセージを伝えたりイスラムそのものをテロと同一視して否定する表現が相次いでいます。また、リベラル陣営からもピューッリッツァー賞受賞者の漫画家17人が連名で「サウスパーク」の検閲に反対する声明文を発表するなど、事態は収まる様子を見せていません。

また、西洋社会から問題はスピル・オーバーしつつあります。スリランカの新聞は「サウスパーク」が釈迦をコカイン常習者として描いたことを問題視し、同国の宗教担当大臣に問い合わせたところ、スリランカ国内での放送を禁止すると表明。すでに首都コロンボに流通しているDVDも回収される可能性があります。

一方、穏健ムスリム国家であるマレーシアの新聞には、ムスリムが自分たちの宗教を特別視できる時代が終わりに近づいていることを示唆する記事も掲載されました。今後、イスラム世界の内部で「自分の宗教に疑問を持って良いかどうか」で議論が大荒れすることが予想されます。

この問題は対岸の火事ではありません。欧米の価値観と日本の価値観が正面衝突をする捕鯨問題、多くの西洋諸国で実現していながら日本では根強いアレルギーのある外国人参政権の問題、少子高齢化でいずれ受け入れなくてはならない移民の問題など、日本社会にも議論をなかなか始められない課題は山積みです。さらに児童ポルノ法を拡大解釈して未成年者らしき対象をアダルト漫画として描くことも禁止される方向で議論が進められています。「サウスパーク」の検閲問題は、人ごとではないのです。

「モーリー大学」ではこの機会に、見たくないものを見ることの難しさ、そして表現の自由はなぜ大切なのか、体を張ってでも守らないといけないのかを解説いたします。当日のホットな最新情報を盛り込んでお届けする所存なので、是非お越しください。

なお、最新のニュース・アイテムへのリンクはモーリーのツイッターでもご覧いただけます。

Posted by i-morley : 13:52