|
京都議定書について 産経新聞から
脱・温暖化 生活見直すきっかけ期待
親潮(寒流)と黒潮(暖流)がぶつかり好漁場で知られる東北・三陸沖。宮城県志津川町の漁協組合員、後藤一磨さん(57)は五、六年前から海の変化に気づいた。
黒潮を好み、仙台以北ではほとんど取れなかったクロダイやマダイが揚がり始める。逆に、親潮に乗って南下し、毎年十月にシーズンを迎えるサンマが昨年は揚がらなかった。
「親潮が南下せず、黒潮の魚が揚がる。三陸沖の旬が変わってきた」
海だけではない。国立環境研究所が各機関の研究をまとめたところ、ソメイヨシノの一九八九-二〇〇〇年の開花日は平年より三・二日早まった。平均気温はこの百年間で一度上がり、このままだと、二〇七一-二一〇〇年には平均して夏の気温が四・二度上昇、真夏日は約七十日増加すると予測されている。
「温暖化の影響とみられる現象はすでに身近に起きており、近い将来、より深刻になる恐れがある」と同研究所の高橋潔研究員は話す。
異変は地球規模で起きている。
各国の研究者らで作る気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書によると、百年間で平均気温は〇・七度上昇。大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は、産業革命以前(十八世紀後半)に約二八〇PPMだったのが、二十世紀末には三六〇PPMを超えた。
北極の氷河も溶解、世界自然保護基金(WWF)は、温暖化が進めば二十年以内にシロクマやアザラシが絶滅する危険性があると警告した。
一刻の猶予も許さない地球温暖化。生態系を守ろうと、CO2など温室効果ガスの削減義務を課した京都議定書が発効する。日本は一九九〇年比6%の削減を義務づけられた。
削減の責務は一般国民にも突きつけられている。一九九〇年比の二〇〇二年度のCO2排出量は、産業部門が微減しているのに対し、運輸・業務・家庭部門が大幅に増加しているからだ。
「『これくらいはいいや』という日常生活が、知らず知らずに温暖化に加担している」
日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の環境委員会委員長、辰巳菊子さん(57)は厳しく指摘する。
ただ、大量消費に慣れきったライフスタイルを変えるのは容易でない。
三人の育児に追われる東京都練馬区の女性会社員(34)は、勤務先では環境負荷の軽減に取り組みながら、家庭では「頭では分かっていても、家事をこなすのに精いっぱい」と苦笑する。
環境省では一般雑誌に環境についての小冊子を挟み込むなど地道な普及活動を続けているが、「予算も少なく非常に難しい」(同省国民生活対策室)。現状を打開しようと、外部に向けて企画を公募、六月の環境月間に集中的にPRし、何とか国民の関心を向けようと懸命だ。
なかなか進まない国民の側からの脱・温暖化だが、少しずつ萌芽(ほうが)がみえている。
東京都日野市の主婦、岡野恵子さん(55)の家には電気釜がない。八千円で買った真空保温調理器でご飯を炊く。
真空保温調理器は沸騰後、数分間とろ火で加熱したあと火から下ろして専用のカバーに入れると加熱状態が続く。さらに、厚手の鍋に手製のカバーをかけて試した結果、八カ月間の電気・ガス代は、前年同期より一万三千三百四十一円減った。取り組みは平成十五年度の「省エネ実践コンクール」奨励賞に選ばれた。
「米国の友人は、わが家の電気料金をきいて驚いている。だけど、知恵と工夫で家計にも地球にもやさしいなんて、楽しいじゃないですか」
辰巳さんは「賢い消費者になって企業を動かそう」と提案する。
たとえば地場産で旬の野菜を選ぶこと。輸送時のCO2排出や、ビニールハウスの温度管理に使うエネルギーを削減できる。「現在、地場野菜はやや割高かもしれないが、需要が大きくなれば、価格は下がる」
辰巳さんが「うれしい兆し」とみるのが、ガソリンと電気を併用、環境に配慮したトヨタ「プリウス」のヒット。一九九七年の発売以来、二十八万台を売った。
「一人ひとりの工夫の積み重ねが大きな変化につながる。議定書の発効が生活を見直すきっかけになれば」と辰巳さんは期待する。
Posted by i-morley : 2005年05月09日 12:56
|